オーケストラ

 9月4日「コンチェルトの夕べ」と題したコンサートが、徳島市文化センターで開催された。演奏するオーケストラは徳島シティーオーケストラ、ソリストはいずれも徳島で活躍する若い音楽家たちだ。徳島のオーケストラと言えば徳島交響楽団がすぐに思い浮かぶ。アマチュアとはいえ、レベルの高い演奏で毎年数多くのコンサートをこなし、徳島県民にとっては親しみ深いオーケストラとなっている。

 さて、この度の徳島シティーオーケストラは、県内在住のプロもしくはプロに準ずる実力を持った音楽家の集まりであるという。ステージを目の当たりにして、徳島にこんなに多くの音楽家がいることにまず驚いたが、同時に彼らが一同に集まって演奏をするという事に、新鮮な驚きと喜びを感じた。NHK交響楽団首席奏者を務める山口裕之氏がコンサートマスターとして色を添えてはいたが、他は紛れもなく徳島の音楽家で構成された、いわゆるプロオーケストラである。会場となった文化センターもほぼ満席で、一段と演奏にも力が入り、客席にいた私は充実した響きにうなずくばかりだった。

 今回のシティーオーケストラを構成するメンバーが、どういうきっかけで集まったのか興味津々であったが、どうやら当日の指揮者でもあった西野康博氏(文理大学助教授)の尽力によるものであることも分かった。以前にこの欄でアンサンブルについて、その継続する事への困難さを書かせていただいたことがあったが、今回のオーケストラ、折角これだけの逸材がそろったのであるから、是非とも二回、三回と続けていって欲しいものである。団員の協力はもちろんの事、まとめ役の力量も問われることになろう。いずれ回をかさねて演奏に幅が出てくるようになれば、スポンサーがつきプロオーケストラとして存続出来る可能性がないとは言えない。

 オーケストラは近代音楽史上に於ける最も高度に完成された合奏形態である。徳島シティーオーケストラの演奏は、プロオーケストラの誕生を予感させる響きがあった。プロオーケストラの存続には限りないエネルギーが必要だが、少なくとも今回の演奏がその夢をかいま見せてくれたことは確かだ。指揮者の西野氏をはじめ、ソリスト、楽団員全員に大きな拍手を送りたい。



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