初搾り

 今年もやってきた初搾り、日差しも暖かい1月31日、私たちは特急列車に乗って池田に向かった。目指すは中和商店、「棚田で地酒をつくる会」の会員達の、佐那河内で育てたお米が、立派な吟醸酒に仕立てられて私たちの到着を待っているはずだ。

 今年の出来具合について杜氏の上田穣さんから説明を受けた私たちは、吟醸酒の待つ蔵へと向かう。途中、仕込み前の磨かれた米粒の美しさに感嘆の声があがる。

 熟成したもろみが搾られると、吟醸酒特有の甘くフルーティーな香りが立ちこめる。我先にと利き酒をする。特に利き酒に通じてるわけでもないが、それぞれのやり方で、香りを楽しみ、口に含み、舌でもてあそぶ、ソムリエになったような気分だ。お酒とは、かくもおいしいものであったか、と感慨を新たにする。
 今回特筆すべきは若い女性が大変多かった事だろう。昔は女性がお酒に興味を持つなんて...という風潮があったが、昨今の女性はお酒の好きな人も多い。聴くところによるとワインからの転向組も多いとか。吟醸酒のフルーティーな味は確実に女性の味覚をとらえているようだが、目を丸くしておいしさにうなずき合っている女性もまた魅力的だ。搾り立ての原酒は18度程の強さ。搾り始めと後では味が違うし、ホンの少し汲む場所が違っても味が変わる。微妙な味わいを楽しみながら、蔵の時間は過ぎて行く。

 蔵の人にお願いして、仕込みに使っている水を飲ませていただくと、おいしさにビックリ。おいしいお酒は、水のように飲めると言うが、この水はおいしい。おいしい水がおいしい酒を作る、こんな当たり前のことも飲んで初めて実感できる。

 参加した人たちは、ほんとにお酒が好きで、お米作りから一年を通して楽しんでいる。長い道のりを経て無事に熟成したお酒を、仲間達と共に味わう喜びは筆舌に尽くしがたい。かく言う私は今年も農作業に参加するチャンスのないままに、この喜びを味わってしまった。後ろめたい気もしたが酒の魅力には勝てなかった。

 今年も、お世話になったあの人や、お酒の好きなあの人に、出来上がった吟醸酒「おでんでん」をプレゼントしよう。でも、数量に限りある手作りのお酒、果たして何本くらい手に入ることやら....。ちなみに販売は4月から。

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