核燃料サイクルの終焉

  高速増殖炉懇談会(高速増殖炉開発の在り方について、国民の意見を政策に反映させるため原子力委員会の元に設置された)はこのほど、高速増殖炉「もんじゅ」の実証炉の建設を見合わせ、いったん実用化計画を白紙に戻す旨の報告書案を了承したという。

 周知のようにもんじゅは一昨年12月8日重大なナトリウム漏れ事故を起こし、その事後処理にあたっては、ビデオ隠し、虚偽の報告などが次々と発覚し、世間のひんしゅくを買っている。昨年5月動燃理事長は一連の事件の責任を取って辞任を余儀なくされている。

 フランスでは今年6月19日、国民議会でジョスパン新首相は施政方針演説中に高速増殖炉スーパーフェニックスの計画を放棄することを発表している。実用化される予定であったフランスのスーパーフェニックスが実証炉から研究炉に格下げになり、閉鎖に至るまでには、多発する事故と増加し続けるコストが大きな原因となっていた。日本でも事情は同じである。政府がこれまでに核燃料サイクルのために投じた金額は2兆円にのぼるが、この政策を推し進めるなら、さらに巨額の国費が費やされることになる。しかも、度重なる事故と、ずさんな事故処理に見られる動燃の不透明な態度は、もはや核燃料サイクルが政策としては、技術的にも経済的にも行き詰まり状態である事を物語っている。

 今年3月には、動燃の東海事業所再処理工場のアスファルト固化処理施設で火災、爆発事故が発生、8月には同事業所で低レベル放射性廃棄物貯蔵施設に水が浸入し、廃棄物を入れたドラム缶の腐食によって、施設内に放射性物質が漏洩していた事実が判明している。ところが、日本ではスーパーフェニックス計画中止発表の翌6月20日に原子力委員会は「核燃料サイクル政策を堅持する」旨の声明を発表している。一連の不祥事によるプルトニウム推進路線の停滞を恐れての、再確認の意味であろうと思うが、あまりに現状を無視したタイミングであったと言わざるを得ない。

 今回の高速増殖炉懇談会の報告書の内容によっては、原子力委員会、及び科学技術庁は核燃料サイクルと高速増殖炉の一点張り路線を根本から変更せざるを得なくなるだろう。
 プルトニウムに心を売り渡した科学者たちの、核燃料サイクル計画の夢はとうの昔から破綻していたのだ。

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