民族楽器の魅力

 先日、寺町の般若院でインドのベンガル地方のバウルと呼ばれる吟遊詩人達の音楽を聴いた。インド音楽と言えば、シタールの演奏を連想するが、これとは違った、より土族的な歌と演奏に心を揺さぶられた。演奏された楽器の中に一際変わった楽器があったが、ベンガル地方では当たり前の楽器である事は、その時求めたビデオでわかった。小脇に抱えた小さな太鼓の底の皮に張られた弦を左手で調節しながら引っ張り、右手に持ったピックで弦をはじいて音を出すという極めてシンプルな構造であったが、その表現力は、かつて耳にしたことのない強烈ものであり、新しい楽器の可能性を見せられてうれしかった。

 世の中に楽器と名のつくものは数知れずある。一般的に良く知られているピアノ、ヴァイオリン、フルートといった西洋の楽器、三味線、尺八等の邦楽器。それぞれの国に、それぞれの言葉があるように音楽を語る楽器も千差万別である。ところが日本の学校音楽教育で中心となっているのは、西洋音楽、とりわけドイツ、オーストリアの音楽が主流となっている。当然楽器もそうした音楽を演奏するための楽器、つまり今日オーケストラで使用されているような楽器が中心となる。他の楽器は、民族楽器として別のジャンルに分けられているが、実際にそれらの楽器が演奏されたりする事は少ない。

 音楽の好きな若者は多いが、学校の音楽の授業はきらいと言う現象は西洋音楽一辺倒に指導されてきたところにも原因の一端があるのかも知れない。住宅事情の悪い日本でピアノがこんなに普及してるのも、こうした教育事情があってのことだろう。

 もし、世界中の楽器を一堂に集めて好きな楽器を選ぶとしたら、必ずしもオーケストラに使用されているような西洋の楽器が特に好まれると言うことにはならないだろうと思う。

 最近は、徳島にいても色々な催しによって、珍しい国の音楽や楽器に触れることが出来る機会が増えた。日頃耳にする事の少ない新鮮な響きに、目を輝かせる人達も沢山いる。
ところが楽器や教材もなかなか手に入らない。折角興味があってもそれを発展させるための環境がととのっていない。個性をもった様々な国の魅力ある民族楽器に触れるチャンスが子供たちに与えられたら、ひょっとしたら音楽教育ももっと魅力的なものになるのではないだろうか。

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