藍染ふんどし


 おなかの周りが少し気になりだした頃からだろう、パンツのゴム紐を意識しだした。大して締め付けられているわけでもないのに、一日がすぎる頃には、腰のまわりにはゴムのあとがくっきりとついている。体にはあまり良くないという話も聞く。ゴム紐を綿の紐に取り替えればいいのだが、最近のトランクスは、ゴムが取り替えられるようには出来ていない。仕方なくトランクスのゴム部分をはさみでジョキジョキ切りすて、そこに袋をつけて綿のひもを通して使っている。

 昨年暮れに異業種交流会の席でこんな苦労話をしていたところ、中にはふんどし愛好者もいて、ひとしきりパンツのゴム紐とふんどしの効用について議論が沸騰した。居合わせた藍染業者は藍染の抗菌作用を力説。ここは一つ藍染ふんどしの試作品を作って、みんなで試着しよう、ということになった。

 年が明けて、新年会。くだんの仲間たちに出会ったところ、藍染ふんどしは完成して持参しているとの事。いわゆる越中ふんどしと呼ばれているもので、早速、ズボンの上から着用法の講義をはじめる者もいておおいに沸いた。

 持ち帰って、風呂上がりに着用してみた。鏡の前に立つと、やや濃いめの藍色に染まったふんどしがまぶしかった。以来、私も藍染ふんどしを愛用している。ズボンとは相性が悪いかもしれないが、そこは慣れで十分にカバー出来そうだ。なによりあのゴムの締め付けられる感触から解放されたのはいい。

 徳島の伝統的な地場産業である藍染のふんどし、親しい友人や、県外のお客様にもプレゼントしてたいそう喜ばれている。下着をプレゼントするのはちょっと照れくさい気もするが、ふんどしだと気楽に手渡す事もでき、話題を提供する事もできる。男臭さなど、何の値打ちもないといわんばかりのご時世、藍染ふんどしに男のロマンを垣間みるのも一興だろう。



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