三線(サンシン)

 沖縄の三味線はご存じのように猫の皮の代わりに蛇の皮が張ってある。そこで蛇皮線などと呼ぶ人もいるが、沖縄ではこれが三味線である。正しくは三線(サンシン)と呼ぶのだが、一般的には三味線で通っている。元はと言えば14,5世紀頃中国から琉球王国に伝わったものだ。後に日本に伝わり、皮は猫になり現在の三味線になったらしい。

 20数年ぶりに沖縄を訪れた私は、仕事の合間を見つけて三味線屋をさがしに出かけた。
国際通りに面した楽器屋さんとか、お土産屋さんにいくと、軒先に三線が沢山つるしてあるが、どうも買う気になれない。やっぱり専門店をあたってみよう。あらかじめ電話帳で調べておいた住所をたよりにさまようことしばし、間口一間の古びた看板に三味線の文字を発見し、老夫婦が店先で三線の皮を張り替えているところにおじゃました。

 何本か品定めをし、ちょっと弾いてくれと言うと、おじさんは「いい音するよ」といって、民謡を一曲弾いてくれた。 本土の三味線に比べると小ぶりで、おもちゃのように見えるが、なかなかどうして立派な音がするではないか。三線は棹で鳴ると聞いていたが、この棹は見たところ良さそうだだ、すっかり納得してしまってその三線を買うことにした。

 ところで三線の皮に使われているのはニシキヘビ。こんな大きなニシキヘビが沖縄で取れるはずはない、タイから輸入しているらしい。ワシントン条約でニシキヘビの商取引は禁止されてるはずだがというと、沖縄の三線用は特別に許可されているのだそうだ。その辺の事情はよくわからないが、とにかく店先にはニシキヘビの皮が積み上げられている。時々、中国土産に二胡を買って帰ったところ、ニシキヘビの皮が税関で剥がされたといって、沖縄まで皮の張り替えを頼んでくる人もいるそうだ。話の種に、とニシキヘビの皮もいくらか分けていただいた。最近はニシキヘビの絶滅を心配してか、蛇模様の入った合成の皮革をはった三線も多く売られているが、音色は今ひとつさえないようだ。

 徳島に持ち帰り、安里屋(アサドヤ)ユンタをつまびく「マタ ハーリーヌ チンダラ カヌシャマヨ~」と、心は沖縄気分。さあ、これから五十の手習い、いっぱしの三線弾きになれるか、私の心はわくわくしているのだ。


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