ホールと企画

 バブル全盛の頃、全国の地方都市に雨後の筍の如く新しいホールが建設された。県内でも各地に比較的小規模なホールが建ち、発表会、コンサート等に地域への文化情報発信の基地としての役割を果たそうとしている。
 文化行政に力をいれているのだという姿勢を、対外的にアピールするのに建物という「モノ」はとりあえず効力があるが、問題はその内容だ。ホールの維持管理には多大の経費を必要とするし、地域へ貢献して行くためには文化に明るい専任の企画担当者の養成が必須のものとなる。どこかの企画会社の売り込みに便乗したお仕着せのコンサートばかりでなく、そのホール独自のコンセプトに根ざした企画が必要になるだろう。
 県内では既に独自のコンサートを企画して成功しつつあるホールもある。北島町創世ホールは「北島クラシカル・エレガンスシリーズ」と題したユニークなコンサート企画で毎回好評を得ている。羽ノ浦町コスモホールは、独自の方式により専属の「コスモホール室内アンサンブル」を編成し、定期的なコンサート活動に乗り出している。これらは全国的に見ても斬新であり、「地域から全国への文化情報発信を行う場」としての役割を担う可能性を秘めている事で評価されるだろう。

 一方、内外のアーティストを招いてのコンサートの中には、首をかしげたくなるようなものもある。お世辞にも上手とは云えないような演奏家に出会ったり、明らかに手抜きと思われる演奏で拍手喝采をうける場合に出くわすこともしばしばだ。こうした企画がどのようなルートから持ち込まれているのか不明だが、公共の予算で行われる場合、収益よりも観客動員の実績作りのために、無料で開催されることも多い。この事自体は歓迎されるべき事かも知れないが、本来しかるべき入場料を払って見るべきものを、公共の機関が代わりに支払っているだけである。元はといえば自分のさいふから出たものであると思うと、どうも合点が行かない。

 開催されるそれぞれのコンサートには、演奏者をはじめ企画、運営する人たちの思いが込められている。そしてホールは、それらの思いを実現させる場所である。今後は、ホール、音楽家、聴衆、一体となって企画段階から参加して行く組織作りも必要となるだろう。

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