演奏の値段

 数多く企画され、開催されているコンサートの入場料はどうやって決まるのだろう。
 著名な演奏家の場合は、たいていマネージャーがいて出演料の交渉をする。主催者側は出演料の他、ホールの使用料、広告宣伝費等を考慮して、損出のないように入場料を決定する。聴衆は演奏家に対する期待値、開催されるホールの規模とかによって、値段を高いとか安いと感じる。期待値が高ければ高価なチケットでもすぐに売り切れてしまうし、反対に興味のないコンサートは安くてもチケットは売れない。このあたりは演奏家の知名度によって大きく左右される。

 先日、あるコンサートに行った。入場料の3000円は県外から来る演奏家のソロコンサートとしては、標準的な額だと感じた。経歴、実績に加えて著名な評論家の推薦文などを印刷したチラシに惹かれて、期待に胸躍らせていった結果はひどい内容であった。入場料の3000円が無駄になったような、何とも云えず悔しい思いをかみしめながら帰宅した。今回だけではない、「金を返せ!」と叫びたくなるような演奏会は過去にも何度かあった。

 下手な演奏を聴かされた場合、これがプロの演奏家であれば、厳しい評価を下すべきであろうと思うが、せいぜいコンサートが終わってから仲間で愚痴を言いあってうっぷん晴らしをするのが関の山といったところだ。日本では聴衆の反応はわかりにくいといわれるように、一曲が終わる度に儀礼的な拍手をしているのが普通ではないだろうか。下手な演奏にはブーイングまではいかなくとも拍手を拒否するぐらいのことはあっても良いかと思う。演奏家の立場から見れば、拍手を頂くことは聴衆の賞賛を意味するし、拍手の拒否は厳しい評価を与えられたことになるだろう。

 演奏家の評価は一回の演奏のギャラ(出演料)によって端的に示される。上手な人、売れっ子は当然ギャラもぐんと跳ね上がる。聴衆がギャラの心配をすることはないと思うが、ギャラの高い人のコンサートはそれなりに入場料も高い。聴衆は一般的な消費者でもある。高い金額を支払った場合は当然それに見合った満足度を要求するし、無料の場合はあまり文句も言わない。需要と供給、期待値と演奏結果、演奏の値段には定価と言うものがない。聴衆の評価こそは演奏の値段を決める一番正直な基準になるべきだろう。



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