無料コンサート

 このところ、公共機関が内外の著名な演奏家のコンサートを無料で開催しているケースが目に付く。しかも、かなり高価そうなコンサートがずらりと並んでいる。私たち一般市民にとっては、本来数千円の入場料がタダになるのであるからありがたいことである。しかし、よく考えてみれば、もともとは私たちの税金が周り回って、こういう形になったのではないか。

 普通コンサートは演奏家に対する出演料などに充てる入場料を支払うのが普通である。額の大小はいわないでも、支払うことは大変重要な意味を持っている。お金を払えば真剣に聴くし、真剣に批評もできる。無料で聴かせて頂いたコンサートでは、むげに批判は出来ないし、無料だからしかたないか、ということにもなりかねない。開催する側は、文化行政の予算の枠に見合った企画を立てるのだろうと思うが、内容よりも、開催実績と集客数などが当面の関心事となっていはしないだろうか? だから安心して客が呼べるような著名な演奏家とか、どこかの企画会社の売り込みに安易に便乗した様なものが多く見られるのだろう。

 一方では、地元の若手音楽家達がポケットマネーをはたいて自主公演の企画をして、再三を度外視したギリギリの入場料で、チケット販売に四苦八苦しているケースや、音楽鑑賞団体などでは、会員の入場料収入で演奏家のギャラや会場使用料をまかなうことで何とか運営を続けている実状がある。公的機関による無料のコンサートは、こうした小規模なコンサートを圧迫する要因ともなっている。出来れば、少しでも入場者からは、お金を頂いて、残りを公費で補助するようにすべきであると思うのだがどうだろう。

 一つ提案がある。行政機関の情報公開が望まれる今日、公的機関が無料でコンサートなどを企画した場合には、当日のパンフレットなどに、その企画に必要とした金額を公表してはどうだろう。企画の段階からの人件費も含めて、合計金額を入場者数で割れば、そのコンサートが必要とした一人当たりの入場料がはじき出される。公的な文化予算がどのように我々の役に立っているのか、知ることも必要だ。もっとも、入場者一人当たりに必要とした金額がわかって、興が醒めねば良いが...。



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