二〇〇〇年の反乱

 年末が近づくにつれ、コンピュータ社会に於ける西暦2000年問題の複雑さと重大さが再認識されている。政府発表の2000年対策に応えて、年末年始は泊まり込みして万一のトラブルに備える企業や自治体、海外旅行を取りやめるケースも出てきている。とはいえ、まだまだ事の重大さを実感としてとらえている人は少ないのではないだろうか。大雨や台風などの予報には敏感に反応するはずであるのに、2000年問題に関しては結構冷静のようだ。

 スタンリー・キューブリック監督の「20001年宇宙の旅」という映画の中で、宇宙船の心臓部であるコンピュータHAL9000が人間に対して反乱を起こしたのは随分昔の話。当時は夢物語のように感じていたが、2000年問題はまさに現実に起ころうとしている、コンピュータの反乱なのかも知れない。莫大な数の産業機器に組み込まれた、コンピュータ応用チップが誤作動を起こした結果、人間に反乱を起こす可能性はかなり高いのではないだろうか。むしろ、まったくそうした心配がないという考え方の方が現実離れしている。

 制御用に組み込まれたチップの内部を全て診断することは不可能に近い。万一原子力発電所内の装置にこうした誤動作の起こる可能性があるとしたら、と考えただけでも恐ろしい。旅行どころではないし、万一に備えて食料や、水を蓄えておくのもあながち無駄とは思えない。

 だが日本国内では、政府がどうにかしてくれるだろうとか、そんなはずはない、という楽観的な考え方が多数の人間を支配している。一般的な人々には、コンピュータ社会の単なる現象としてしか受け止められていないし、危険性については殆ど理解されていない。
1999年の最後にこんな大きな不安が来る事を誰が予想したであろうか。コンピュータ技術者ならだれでも予想出来たはずなのに、それを棚上げしてきた結果、人類全てがその責任を負わねばならなくなっている。技術力を過信した余りの、人災とも言える2000年問題には、果たしてどのような結果が待っているのだろう。

 2000年1月1日までに残されたあと10日間、新しい年を迎えるに当たって、飲料水や食料の備蓄はもちろんの事、万一に備えての非常用具も念入りに点検される事をお勧めする次第である。



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